2019年2月4日 オピニオン » 1314号

古紙ジャーナル書評

ジョージ・オーウェルが一九四八年に
発刊した未来小説「一九八四年」

 中国が昨年、米国政府や各航空会社に伝達した文書では、台湾・香港・マカオは中国の一部だと明記することを求めたものだった。これを受けた米国ホワイトハウスは、「中国共産党が独自の政治的見解を米国市民や民間企業にまで押しつけるのは非常にナンセンス。ジョージ・オーウェルが描いた全体主義国家を想起させるものだ」と中国の要望を拒否した。これが米中貿易戦争の導火線になったと言われている。

 最近、様々なメディアで名前が出てくるジョージ・オーウェルはイギリスの作家・ジャーナリストで、1903年に当時イギリスの植民地だったインドで生まれた。彼が約70年前に書いた「1984年」という小説は、全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖の日々が描かれている。出版当初から冷戦下の英国と米国で爆発的に売れた。2002年にノルウェーのブッククラブが発表した「史上最高の文学100選」に選出されるなど、欧米や日本での評価が高く、思想・文学・音楽等の様々な分野に、現在も多大な影響を与え続けている。

 文学関連では、村上春樹の「IQ84」でモチーフにされ、日本で認知されるようになった。また伊坂幸太郎は「モダンタイムス」や「ゴールデンスランパー」で度々取り上げている。他に文学関連ではドストエフスキーが、音楽関連ではレディオヘッドやデビッドボウイが「1984年」に関連した曲を発表している。日本では、元マッドカプセルマーケッツの上田剛士が率いるプロジェクトバンド「AA=(エーエーイコール)」は、ジョージ・オーウェルが書いた「動物農場」をコンセプトにしたバンドである。

 ジョージ・オーウェルの「1984年」や「動物農場」、ケストラーの「真昼の暗黒」は、反全体主義、反集産主義、反社会主義のバイブルとして、今なお人気が高い。政府による監視や検閲、権威主義を批判する反体制派も、これらの小説を好む傾向にある。

 「1984年」は、1948年に書かれた未来小説。統治された国の住人は、部屋の隅々まで監視されている。住人は全て団地に住んでおり、部屋には大きなテレビ画面がある。このテレビ画面でこちらの行動や表情まで、24時間365日、常に監視されている。1日3回、国家の主君である「ビッグブラザー」を称える時間が設けられている。主君の偉大なる功績を称え、今を幸福に生きていられることは、全て主君のおかげだと考える。また他に「5分間憎悪」という時間もある。これはいかに隣国が悪い国であるかを刷り込ませるマインドコントロールで、主君を称えて敵を憎む。そして常に監視を行い、少しでも国に反する行動を取った者、少しでも国に反する言葉を発した者は、すぐに処刑される。そうして人々は、完全に支配される。行動を起こすことができなくなるばかりか、やがて考えることもできなくなる。行動を奪い思想も奪う。それが支配される者の終着点である。

 この描写を読んで、多くの日本人が思い浮かべるのは北朝鮮や中国だろう。独裁国家の監視社会は、これらの描写と似ている部分が多い。現に中国は、13億人総監視社会を目指している。近年急速に普及している電子決済システムでは、登録者の名前・職業・収入・学歴等の他に、位置情報、ネットの閲覧・検索・購入履歴、政府への貢献度・危険度までがデータとして蓄積されている。中国経済は自由化して久しいが、中国が目指すのは、この小説に出てくるような独裁による忠実な監視社会である。

 第2次世界大戦後の間もない時期に、この未来小説が書かれたことに驚きを感じる。社会主義の本質と将来起こるであろう問題点を見抜いている。この小説を読むことで、様々な未来が見えてくるかもしれない。

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