2025年3月17日 オピニオン » 1615号

コラム「虎視」

コラム「虎視」

 シリコンバレー発のGAFAなどの新興企業がもてはやされる陰で、米国の製造業は着実に衰退してきた。製造業付加価値額の世界シェアは、1995年には25%を占めていたが、2023年には14%まで低下。紙・板紙の生産量もこの間に20%以上減少した。トランプ大統領の対外強硬策の背景には、製造業の成長がもはや東アジアや欧州にしか期待できないという現実がある。

▼3月初旬、米国政府はカナダおよびメキシコからの輸入品に対し、原則25%の関税を発動。米国はパルプなどの原材料をカナダから輸入しており、米国森林・製紙協会(AF&PA)は、サプライチェーンに深刻な混乱をもたらすと懸念を表明。製紙業には92万5千人が従事しており、関税による供給網の分断は雇用の安定を揺るがしかねない。

▼米国の鉄鋼業界では、ラストベルト(錆びた工業地帯)の再興や日鉄によるUSスチールの買収阻止など、政治色を帯びる施策が際立つ。しかし、現時点では製紙業界で同様の動きはない。欧州のスマーフィットと米ウエストロックの経営統合や、米IPによる英DSスミスの買収も大きな障壁なく進んでいる。この状況も、見方によっては付加価値の停滞する米国製造業への引き込みともいえまいか。

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