2021年7月12日 オピニオン » 1434号

コラム「虎視」

コラム「虎視」

 米国でしか造れない品種のライナーがある。バージンパルプを100%配合したKLB(クラフトライナーボード)だ。米国で生産される段原紙の約2割がバージン品とされ、KLBは年間約400万トンが海外向け。これが米国内での食品・日用品向けの需要増や海上コンテナの不足によって逼迫し、輸入国で供給不安を引き起こしている。

 ▼例えばフィリピンのバナナ梱包用。長期保管に用いるため、吸湿や乾燥に耐えうる高い強度が要る。また日本でもパレットや輸出梱包、電化製品などといった特種用途でも需要があった。木材に比類する強度のあるKLBは、古紙を使った再生ライナーでは同程度の強度が出せない。こうした高強度の段ボールは各地で一定の需要があり、日本の段ボールメーカーも米国品の入手難に頭を抱えている。

 ▼KLBの輸入価格が急騰している背景もあって、内製化を試みようというメーカーも少なくない。ただ、パルプに近い坪量の厚物のため、既存設備では低速度で抄くことになる。近年、各社が志向してきた薄物化・高速化とは正反対の流れである。段ボールシートを2層から3層に増やすなど合わせ技で強度を補う必要があるだろう。これを機にどこまで米国品に置き換わるのか、注目される。

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