2021年3月15日 オピニオン » 1418号

コラム「虎視」

コラム「虎視」

 10年一昔とは、「世の中は移り変わりが激しく、10年も経つともう昔のことになってしまう」という意味のことわざ。近年の典型的な例がスマートフォンである。2010年の日本のスマートフォンの普及率は、1割にも満たない9.7%だった。これが現在は78%にまで伸びて隔世の感がある。この10年間で最も変化したことは、世界中でスマホが普及したことである。

 ▼スマホの普及で消えたもの、消えつつあるものは数多くある。特に大きな影響を受けたのはカメラ業界。以前の高解像度のデジカメより性能が良いカメラがスマホに搭載されており、専門的に写真を撮る人以外は、スマホで事足りてしまう。また音楽プレイヤーもしかり。古くは世界のソニーの代名詞だったウォークマンは、音楽メディアの移り変わりと共に姿を変えてきたが、ついにはスマホに吸収されつつある。音楽はクラウドサービスによってスマホで聴く時代へと移行した。

 ▼紙媒体もスマホによって大打撃を受けた。米国では、この10年で新聞用紙の生産は7分の1に、印刷・情報用紙の生産は半分に減少した。新聞・雑誌は、紙ではなくスマホで見るというスタイルに変化しつつある。製紙・古紙業界にとっては悩みの種だが、時代には逆らえない。

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