
▼司馬遼太郎著「菜の花の沖」では、江戸後期、淡路島の貧家に生まれた高田屋嘉兵衛が廻船商人として身を起し、ついに蝦夷・千島で活躍する偉大な商人に成長していく様を描いている。嘉兵衛の商人としての心得は、①品質を妥協しない、②ニーズに合う商品をタイムリーに提供する、③時代の流れを察知する、④売り手が卑下しない。いつの時代の商人像も同様だが、特に嘉兵衛が説いたのが、売り手が必要以上に卑下しないことだった。実際にその考えが奏功し、売り手と買い手が対等な関係を築いた。
▼古紙業界はどうだろうか。わずか10年前までは、製紙メーカーと古紙問屋は主従関係のような一方的な関係だった。納入義務がありながらメーカーがいらないと言えばカットされる、価格は下がる一方、在庫が膨れ問屋はメーカー詣での日々、自腹を切って赤字輸出ー等。当時、製紙原料の54%ほどが古紙(現在は65%)で、最も多い原料をタイムリーに供給しているにも関わらず、メーカーの都合で量と価格が決められていた時代。しかし2002年から中国への輸出が本格化し、需給が逼迫したことで売り手市場に。必然的に問屋の地位も向上した。嘉兵衛は言う。「卑下せず、尊大にならず。人間関係も商売もそれが基本である」と。
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2026年05月11日
コラム「虎視」
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