受験シーズンが終わって新学期が始まる。受験前は、縁起が悪い言葉を避ける必要がある。このタブーの言葉のことを忌み(いみ)言葉というが、受験では、落ちる・滑る・転ぶ・つまずく等が該当する。
▼日本の製紙業の父と言えば、大川平三郎氏(初代王子製紙専務、後の樺太工業社長)である。渋沢栄一氏は欧米式の洋紙生産工場の開設に尽力したが、実務は渋沢氏の愛弟子だった大川氏が取り仕切った。大川氏は13歳から渋沢家に寄食し、雑用をしながらドイツ語学校に通学。16歳の時に日本初の洋紙を生産する抄紙会社(後の王子製紙)ができ、英国人と米国人技師が機械を据え付けるのを手伝った。20歳の時に米国に、28歳で欧州に製紙技術を学ぶために留学。29歳時に日本初の木材パルプ生産工場の開設に携わった。
▼トップを務めながらも生涯技術者だった大川氏は、抄造見本を見ただけでマシンのどの部分の調子が悪いかが分かったという。この大川氏が生涯で最も避けていた食べ物が「刺身」だという。「切る」というのが「紙切れ」を連想させる。忌まれたものということで、食べることを避け、切る・詰まるは氏にとって忌み言葉であった。逆に蕎麦は大好きだったが、蕎麦は噛み切らないからだと推察する。
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