▼スウェーデンの首都ストックホルムにあるヴァーサ号記念館を訪問した。ヴァーサ号は一七世紀前半、スウヴェーデン王国の当時の最新技術を結集し、世界最大の軍艦とも言われた。国の誇りである王艦だったが、なんと処女航海に出てわずか一・五キロの地点で、瞬く間に沈んでしまった。
▼当時の最新技術を結集した軍艦が、航海に出てすぐに沈没してしまっては、スウェーデン王国の威信に関わる。沈没した原因は諸説あるが、現在も謎のままだ。大砲を多く積みすぎて重くなりすぎたという説や、元々設計ミスだったという説、船長が酔っ払っていたという説等。しかしどの説も立証されることなく、王国はこの事実を歴史の闇に葬り去った。
▼三百年後、歴史学者のフランセンがヴァーサ号の研究に着手した。彼は、ストックホルムの沖合いにまだヴァーサ号が沈没したままだと確信し、本格的に調査に乗り出した。百回以上の困難な潜水調査を経て、一九五八年から引き揚げ作業を開始。そして一九六一年、三百三十三年の間、海底に沈んでいたヴァーサ号がついに地上に引き揚げられた。ストックホルム近郊は、内海で塩分濃度が低いため、浸食を免れ、ほぼ原型で残っていた。そこには一七世紀の船上生活があった。
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