2021年1月25日 オピニオン » 1411号

コラム「虎視」

コラム「虎視」

 かつて静岡県袋井市にあった鉄スクラップと古紙を扱う問屋が面白い取組みをしていた。約230トンのCO2排出権を購入し、カーボンフリーに近い古紙を供給していたのだ。古紙問屋は主に回収時やヤードでの圧縮作業時にCO2を排出する。これを排出権で相殺することで、差別化にも繋がるというわけだ。ちなみに排出量トンあたりの価格は約4万3000円だった。

 ▼脱炭素社会に向けて、製紙業界はカーボンフリーの紙を造れるのか?課題は①石炭火力発電から脱却できるか、②植林地をこれ以上増やせるのか、③古紙利用増と両立できるかにあろう。3割を依存する石炭発電はコストをかければ転換出来るかも知れない。ネックは洋紙市場の急激な収縮である。海外植林をこれ以上増やすにも、自製パルプの黒液を回収利用するにも、洋紙需要が減退すればチップ需要と相入れなくなる。

 ▼製紙全体で排出原単位の大きな板紙比率が増える中、排出量の削減効果は弱まりつつある。また古紙利用増とCO2排出減はトレードオフの関係にあり、脱炭素を目指す中で古紙は分が悪い。冒頭の古紙供給側の排出抑制はその次のステップであろうが、古紙利用の優位性が揺らぐ可能性もあり、脱炭素に向けた各社の取組みに注目すべきだろう。

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