昨年、古紙の輸出市況が異常な高値を付けながらも、過去最高益を叩き出した王子ホールディングス。その立役者である矢嶋会長へのインタビューが実現した。内外の事業で成果を出した手腕ゆえか、強権的と畏怖される向きもあった。古紙の量、価格を巡ってサプライヤーと緊張感が高まる場面も見受けられた。そんな氏に古紙調達に対する考えを率直に訊くことができた。
▼王子の古紙消費量は国内最多の年間440万トン。製紙メーカーには90年代、古紙市況の低迷によるごみ化の危機から、回収業者と住民らに製紙側へ最低価格の保証を求めて、デモ行進されたトラウマがある。今回も輸出急落後、同社の調達方針に注目が集まったが、矢嶋会長は決して買い叩くことをせず、価格の安定を後押しすると明言した。
▼中国の2020年問題で世界の古紙需給の変調にも直面するが、同社としては基本的に段ボール古紙は余っていくとの見立てだ。むろんマレーシアの増設、苫小牧の転抄はこうした古紙の有効活用を念頭に置いた投資である。同社の姿勢に国内でもっとも古紙を消費するトップメーカーの矜持を垣間見た。今や古紙は単なる原料の域を超え、ときに経営や社会的責任を揺さぶり、投資判断を左右する戦略物資となった。
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