2021年5月17日 オピニオン » 1426号

コラム「虎視」

コラム「虎視」

 巨額の設備投資が要る製紙産業は、いかに稼働率を上げるかが至上命題。そのため予期せぬ自然災害は、生産性を大きく棄損するリスクでもある。一般的に製紙メーカーの工場は、震度5以上の地震を検知して、マシンやボイラーが緊急停止するという。一旦、建物・設備の損傷や従業員の安全を確認した上で再稼働する手順となっているようだ。

 ▼気象庁のデータベースによると、2010年以降に日本列島で起きた震度5弱以上の地震は計195回。年18回前後、月1.5回はどこかで大きな揺れが観測されている。頻度が多いのが①福島県39回、②茨城県35回、③熊本県27回、④宮城県26回、岩手県19回、⑤北海道15回だ。地震の特性として、日本海側より太平洋側で多く、海洋沖で起きたほうが被害は大きく、同じ場所でも繰り返し発生することが挙げられる。

 ▼日本製紙は11年に石巻工場が東日本大震災で発生した津波で被災。八代工場は18年の熊本地震では無傷だったものの20年の豪雨で浸水。そして今年は群発した福島県沖地震によって石巻・岩沼工場が数度停止し、岩沼は今も復旧中だ。不運では言い尽くせないほど、この10年間で災禍に遭遇してきた。厳しい経験を糧に、コロナ禍の脅威さえ克服する挽回策に期待したい。

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