2025年2月24日 オピニオン » 1612号

コラム「虎視」

コラム「虎視」

 トランプ大統領の顧問を務めるイーロン・マスクは、南アフリカからカナダを経由して米国に移り住んだ移民の一人である。マスク氏は父親との確執があり、今ではほぼ絶縁状態とされる。高い知性を受け継ぎながらも、新天地を目指し、自ら人生を切り拓いた。宇宙開発や電気自動車分野でイノベーションを実現できたのも、こうした複雑な家庭環境と無関係ではないだろう。

▼イノベーションとは、その時代に繁栄を極める産業に身を置く人々にとって必ずしも歓迎されるものではない。既得権を脅かされる恐れがあるからである。家族主義を重んじる日本では、既得権こそ前世代の遺産であり、それを壊していくことに対する抵抗感が根強い。日本でイノベーションが起きにくいのも、安定や序列を第一義に置く家族的な経営基盤が依然として残っているためであろう。

▼絶妙な秩序を形成してきた製紙・古紙業界にも、資本の波が押し寄せている。その象徴がファンドの台頭である。製紙メーカーの株主総会では株主提案が相次ぎ、古紙問屋の再編にも動きが見られる。果たして、これまでの家族主義的なスタイルから、効率・成果重視の経営手法へどこまで移行できるのか。既存の業界に刺激となる一方で、混乱も引き起こしかねない。

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