ピューリッツァ賞作家であるハルバースタムによる「ベスト&ブライテスト」という本がある。泥沼化したベトナム戦争に突っ走った米国の内実を記した名著で、タイトルが意味する米政府の「最良の、最も聡明な人々」がいかに判断を誤ったか、愚策から抜け出せなかったのか、内輪の論理が幅を利かせた事実を丹念に描写している。
▼日本の大手総合商社はもっとも人気の高い職種の一つ。社員は受験戦争や厳しい採用試験にも勝ち抜いた人々であろう。その中で、丸紅は本体に紙パルプの部門を設け、製紙メーカーの事業会社を抱える唯一の総合商社となった。しかし、ベトナムの段ボール原紙事業KOAによる巨額赤字が続き、紙パ部門は一人負けで、暗雲が垂れこめている。
▼KOAは22年度に▲143億円、23年度に▲227億円の損益を計上。初期投資の約200億円(推計)と合わせ、投じたのは500億円超。現地の代表を務めた責任者は、昨年10月に退社し、台湾系の栄成紙業に移籍したという。中国禁輸後の中華系メーカーによる東南アジア進出や需給環境の変化は、最優秀な商社マンでも読み切れなかった。いよいよ事業切り離しが取り沙汰されるが、本体の紙パ部門へどこまで波及するか注目される。
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