2021年5月10日 オピニオン » 1425号

コラム「虎視」

コラム「虎視」

 長崎市観光連盟のYouTube動画で、長崎市のごみ収集でそりを使った様子を見ることができる。そりと折りたたんだカゴを担いで、延々と続く坂を運んでいく作業員の様子が映る。坂の上に着くと、そりの上に置いたカゴにごみを積めるだけ積んで、そりを引っ張って階段を下ろしていく。道が狭くごみ収集車が行けない高台や斜面地区では、車が入れるステーションまで人海戦術で運ぶ。手慣れた人でもかなりの重労働で、そりの制御も難しいという。

 ▼長崎市内には1万7222ヵ所のごみステーションがあるが、1230ヵ所(7%)はこのような形でそりを使って階段を下ろしていく。長崎ではこのような回収方法を「引き出し回収」と呼んでいる。この地域では当然、古紙や他の資源物でもそりを使って回収が行われている。

 ▼長崎市は四方が海と山に囲まれた土地で、貿易や造船業によって栄えてきた。平地が少なく、山の斜面をなめるように家が建っており、日本一坂が多い街として知られている。坂道は風情があって眺めも良いが、高齢者にとっては日常生活の上り下りは大変。車いすで上ることもできないので、街を離れる住民も増えている。ちなみに全国の県庁所在地の中では、最も人口減少率が高い。

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