2022年7月4日 オピニオン » 1482号

コラム「虎視」

コラム「虎視」

 小売のPB(プライベートブランド)が値上げラッシュに抵抗している。イオンは「トップバリュ」の食料品・日用品の約5千品の価格を7月以降も据え置くという。昨年9月に宣言してから10カ月以上にわたり、値上げを凍結。イトーヨーカドーやОKストアでも同様に据え置かれている。PBの価格修正が進まないと、トイレットペーパーといった紙製品はもとより包材である段ボールの値上げ交渉も難航するという。

▼こうした小売業の源流をたどると、行き当たるのがダイエー創業者の中内功が掲げた「消費者の味方」「価格破壊」という思想である。価格主導権をメーカーではなく小売が握ることで、消費者の熱狂的な支持を得た一方、「30年抗争」といわれる松下電器との軋轢も生み出した。今回も製品値上げに動いた花王の製品をОKストアが店頭から締め出す騒動が起きている。

▼総務省の産業別就業人口をみると、製造業と卸売・小売業は1千万人ちょっとでほぼ拮抗する。消費者は同時に製造業の勤め人でもあるわけだ。日本人の平均賃金が30年間上がらず、製造業の付加価値が低迷しているのは、小売による廉価信仰も一因だろう。SPA(製造小売)の業態で値上げに動いたことからも、価格の適正化は欠かせない。

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