2018年3月末に発刊された「言ってはいけない中国の真実・橘玲著(新潮文庫)」が、非常に興味深い内容だったので紹介したい。冒頭には中国十大鬼城観光として、鬼城のカラー写真が掲載されている。鬼城というのは、中国の各都市に点在している廃墟、ゴーストタウンのことである。中国になぜ鬼城がこれほど存在するのか。そしてなぜこれらが同じような形状をしているのかを解き明かしている。
この著者は「タックスヘイブン」や「マネーロンダリング」という経済小説の著者としても有名な橘玲氏の「私見的中国観」を自身がまとめたもの。「中国は経済成長以前から頻繁に訪れているが、私は中国評論家ではない」と語っている。それがこれだけ多くの情報が詰まっているのには理由がある。様々なスペシャリストや書籍から事実を引用することで、多面的に検証し、膨大な情報を引き出している。
鬼城がなぜ各地方に点在するのか。それには中国の地方政府の経済事情がベースにある。90年代から始まった中国の脅威的な経済成長は、莫大な人口と安価な労働力によって成立し、「世界の工場」と呼ばれた。しかしその安価な労働力は過去のものになりつつあり、カントリーリスクも相まって、外資系企業の中国離れが加速している。日本企業も脱中国の流れが加速し、東南アジアや新興国への移行が進む。
多くの専門家が指摘しているが、2000年以降の中国の経済成長は、中国の地方政府が生んだ錬金術によるところが大きい。中国中央政府は90年代、地方政府の地方債の発行を禁止したが、多大な税金のノルマは増大した。地方政府が生みだした錬金術は、四面楚歌の状況から、地方政府の税収が潤い、地方の企業が潤い、結果的に中国の発展に繋がるという三方良しのものだった。しかしその割りを食らったのは、地方の農民だった。
中国では土地は国有地であり、農民は国から土地を借りて農作を行う。この土地をタダ同然で農民から取り上げ、不動産に投資を行い膨大な利益を生む、というのが中国の地方政府が生みだした錬金術のカラクリである。この不動産投資に地方銀行や華僑、香港のデベロッパーや外資も群がったことで、不動産バブルが起こった。これが中国経済成長の源である。
しかしリーマンショック以降、不動産バブルが崩壊したことや、シャドーバンクの崩壊、外資系の投資が急減、農民の権利意識が高まったこと等が重なり、農民から取り上げた土地に高層マンションやオフィス群を建設していたプロジェクトが、資金難のために凍結した。それが現在、各都市に鬼城が点在する正体である。
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