
▼米大統領選が佳境に入った六月二十八日、トランプ氏が見慣れた光景の場所で演説していたのをご記憶だろうか。積み上った金属スクラップとアルミ缶のプレス品の前で、例の通商政策を激しく論じ、聴衆を沸かせていたのだ。舞台はペンシルバニア州のモネセンという人口七千七百人の小さな町。このスクラップヤードを運営するアルミナソース社は数百人いた従業員を、今では三十五人に減らした。
▼事業縮小を余儀なくされたのは、米国で七番目の鉄鋼メーカーであるウィール・ピッツバーグ社が二〇〇〇年代前半に経営破綻したことによる。モネセンにも工場があったので、当時の人口は二万人を数えていた。つまり鉄鋼や石炭などの基幹産業が衰退した地域(ラスト・ベルト)の象徴として、トランプ陣営は演説場所に選んだのである。
▼米英による保護主義の転向は、グローバル化の行き詰まりを突き付けた。グローバリズムは金融エリートを生み出し、その政治献金が世を動かす。そうした現状への反乱が起こったわけだ。トランプ氏の新しさは、選挙を自己資金で戦い、途中から献金を受けた相手も中小企業や事業オーナーに限った点にある。はたしてスクラップ業者のような地方の零細企業が活力を取り戻すのか、目を凝らしたい。
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