
小学館の文芸誌であるGOATが異例の売れ行きをみせている。文芸誌は、新人作家の発掘や単行本化の動線、文壇での評価軸といった出版業界のインフラだったが、SNS起点で話題が拡散する今、衰退傾向にあった。他誌が数千部と言う中で、新感覚のGOATは5万部超を売り上げ、完売するケースも相次いでいる。
▼小説、エッセイ、短歌、対談などでジャンルを横断、国境も越えた執筆陣で読み切りの構成。どこからでも読める気軽さに加え、510円という破格は完全に「逆張り」だ。まるで持ち運びを拒むかのような500頁超の重厚感にも、時流に迎合しない編集方針が滲む。だが読み始めれば、さらさらした質感、特集ごとの色替えといった紙の心地よさも相まり、いわゆる没入感を演出してくれる。
▼誌名のGOATは、紙を愛してやまないヤギにちなむ。その考えに共感した大王製紙が使用する用紙をすべて供給。こだわりの紙質と頁数を考えれば、採算が気になるところだが、姉妹誌も刊行されるなど、波及効果も生み出している。本文用紙の「Remsスタンダード」や「FSエリプラペーパー」はここ数年に環境配慮の視点で開発された銘柄だ。需要減に嘆息せず、紙の可能性を追究する姿勢も忘れてはならない。
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