中国の紙・板紙生産量は2010年頃までに6,000万トンになる。この見通しはかなり可能性が高いものになってきた。珠光デルタ地域(広東省)や長江デルタ地域(上海、江蘇省、折江省)、山東省などを中心にした紙・板紙の大増産が進展しているからだ。
6,000万トンといえば現在の日本の生産量の倍になり、いずれトップの米国(昨年の生産量は8,022万トン)に迫る紙・板紙生産大国になるだろう。当然その頃には世界の製紙企業の上位に顔を出す中国企業が出てきているだろう。その企業とはチェンミンか、はたまたナインドラゴンか。
2003年の世界の製紙企業の上位20社は2面の表の通りだ。パルプ&ペーパー・インターナショナル(PPI)誌の調査による。90年代後半から2000年初頭にかけて、世界的規模による製紙企業の合併・再編による集約化が相次いだ。日本でも王子製紙、日本製紙の二大企業を中心に一気に再編成が進んだことは周知の通り。上位20社はこの再編の嵐の中で生き残った企業でもある。
20位の中に、米国が7社、欧州が7社、日本が2社顔をだしている。欧州勢のうち5社が北欧勢である。北欧勢によって西ヨーロッパの製紙が飲み込まれた格好だ。日本を除いたアジアではシンガポールに本社を持つAPP(アジアパルプアンドペーパー)が20位に顔を出している。03年時点では、中国に本社を構える製紙企業は1社も顔を出していない。
APPは97年のアジア通貨危機によって一時は経営危機に瀕した。上位20社の中でストラエンソ、UPM-キンメネが中国投資を行ってきているが、最大の投資家はやはりAPPであろう。中国で年産100万トンメーカーとなった金東紙業、寧波中華紙業はこのAPPグループである。
APPグループ以外で年産100万トンメーカーに成長したのは、チェンミン(晨鳴紙業)、ナインドラゴン、リー&マンである。予備軍としてフワタイ(華泰紙業)などがいる。これらのメーカーの中から、あと5年も経てば世界の製紙企業の上位に名前を連ねる企業が出てくる可能性が高い。
91年の世界の紙・板紙生産量を地域別にみると、別表のように北米がトップで8,869万トン、シェア36.8%、次いで欧州が7,549万トン、同31.3%、アジアが6,048万トン、同25.1%にとどまっていた。 しかし、02年になると、北米、欧州、アジアでの生産が拮抗するようになり、しかもアジアがわずかながら他地域を抜いてトップに立った。この原動力は中国であり、中国の生産が拡大すればするほどアジアのシェアが今後高くなっていくだろう。つまり、世界の紙・板紙生産の中心が北米からアジアに移ってきたことを物語る。
中国の紙・板紙生産が3,000万トンに乗せたのは2000年だった。03年には4,166万トンになる。わずか3年で1,000万トン以上も生産が増えた。このスピードでいけば06年頃には5,000万トン台に、09年頃には6,000万トンになる。08年には北京オリンピック、10年には上海での万博の開催が控えている。こうした大きなイベントがあるので、このスピードはあまり落ちないのでないかとみられている。
関係者によっては今年の中国の経済発展のスピードは減速し、踊り場に入る。しかし、07年からオリンピック開催の08年にかけて再び加速すると予測する。こうした見方も、調整期があるものの中国の高度成長はまだまだ続くとの観点に立っているわけだ。
ちなみに日本は1985年から95年にかけてのバブル崩壊期を挟んで、この間に紙・板紙生産は1,000万トン増加した。しかし、95年以降から現在までをみると、00年の3,183万トンをピークにして生産は伸び悩んでいる。ほとんど成長がみられない。製紙産業が成熟化し、中国とは対照的な生産状況にあるわけだ。そして01年には中国が日本の生産を初めて上回った。この間、王子製紙、日本製紙の二大企業による集約化が進んだ。大王製紙以下の企業による集約化がまだ進むのかどうか。
前述したように中国の驚異的な生産増を推進しているのが、金東紙業、チェンミン、ナインドラゴンなどの大手企業である。リー&マンが段原紙マシン二台を導入した常熟工場は常熟市の工業団地の一画にある。隣接地には世界の6位に顔を出しているUPM-キンメネの洋紙工場が稼働しているという。国内、外資とも設備投資の内容がますます大型化し、顔ぶれも多様化してきた。
ともあれ中国では①年産100万トンメーカーが相次いで誕生している②先に達成した100万トンメーカーはそこに安住せず、さらに200万トン、300万トンメーカーを目指している-などの現実に目の当たりにすると、この10年で生産が倍増(3,000万トンから6,000万トンに)するという可能性は極めて高いものにみえてくるわけだ。
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